設置目的

 現代の日本社会は高度に組織化され、きわめて複雑な構造をもっているだけでなく、国内的にも国際的にも変化のスピードが早く、著しく流動化・多様化しており、脱工業化社会や管理化社会、情報化社会、あるいは「国際化」の時代や「地方」の時代など、さまざまな名称で呼ばれている。こうした社会では、人びとの価値観や行動様式が多様化し、教育に対する期待や要請は多種多様なものとなっている。また教育のあり方や役割も大きく変わり、教育の実践的課題もますます複雑化し深刻化してきており、いずれも緊急に検討し、解決することが要請されている。

 このような時代に、人びとの個性や独自性、多様性を尊重すると同時に、現代社会にふさわしい人間としての主体性(アイデンティティ)を確立し、21世紀の国際社会で活躍できる人材育成するためには、空間的にも時間的にも幅広い視野から、教育の諸問題を検討し、その成果を実践的に活用していく方途を探求することが要請されている。教育の諸問題は国の教育制度や教育政策などの巨視的なものから、学校の授業や家庭教育などの微視的なものまで多岐にわたっているが、いずれも問題の根元を明らかにするとともに、その実践的な解決をめざして、具体的・計画的に対処していかなければならない。

 本研究室は、このような課題に応えていくために、国際的ないし世界的な視野に立って、各国民・民族の教育の制度、実践、理論について比較考察し、特定の国民または民族の教育を、その社会的文化的背景とともに明らかにし、さら複数の国や文化圏にまたがって存在する教育の諸問題について研究することをめざしている。現在、本研究室の関心は、比較教育学の方法論、国際化時代の教育課題への比較教育学的アプローチ、高等教育論、多文化教育研究などにおかれている。

 学生の教育については、概論・特論のほか、学部学生中心の基礎的な課題演習、大学院学生中心の課題演習、文献講読演習(英語)、各部門共通の文献講読演習(中国語)等を開講している。また、1993年度秋より、九州大学、名古屋大学の比較教育学関係研究室と共催で3大学合同ゼミ(年1 回、大学院学生対象)を開講している。